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柳谷環さん

母がつくってくれた
スカート

22.01.08
HIROSHIMA

インテリアにもなる佇まいのおもちゃメーカー「Sukima.」と、おもちゃづくりの経験とノウハウを活かしたクリエイティブデザインの事務所「CENSA」の代表である柳谷環さん。会社の仕事にも欠かせない存在となっているお母さんがつくってくれた自作のスカート。

--だいたい何でもつくってくれた母

「昔から洋服をつくる仕事をしていたお母さんが、私の服もよくつくってくれていました。今回クッションバッグにループケアするこの服は新しめで、私が会社を辞めて個人事業主になった2015年につくってもらいました。会社を辞めて、おもちゃをつくろうと思っていろいろ動いていた時期で、お金もなくて新しい服も買えなかったから『お母さん、ちょっとスカート作ってよ』とお願いして、一緒に生地を見に行き、つくってもらったものなんです。」

子どもの頃によく服をつくってもらっていたという話は聞くけれど、大人になってからもつくってもらっているのはこの取材シリーズでも珍しいかもしれない。

「布を探してきてつくってもらうことも、お母さんが昔着ていた服の丈を直したり、デザインをちょっと変えたりすることも多いですね。こんな感じがいいと資料を見せながらお願いすると、だいたい何でもつくってくれて、このスカートをつくった残布で子どもにもショートパンツをつくってくれました。」

大人になれば着たい服を具体的におねがいできるけれど、子どもの頃はなかなかうまく伝えられるものでもない。実際お母さんがつくってくれたのは、お母さんの趣味で好きなものだったそうだ。

「地味な服が多かったですね。かわいいひらひらとかキャラクターの服にすごい憧れはあったんですよ。でも着せてもらった記憶がなくて、お母さんが作ったシンプルめなものが多かった。当時は嫌でしたよ。ふりふり着たい! 友達が着てるようなカラフルなの着たい! とか。今となってはつくってもらえるし、ラッキー。」

お母さんはどんな方なのだろう。

「お母さんはよくしゃべりますよ。あと明るい。もうちょっとしたら、わーってテンション高くやって来ると思います。」

お母さんは服をつくってくれるだけでなく、いまでは会社の仕事を手伝ってくれる大切な存在でもある。

「お母さんがいないといろいろ進みません。木のおもちゃをレーザーカッターで切った後の、ヤスリがけもやってくれています。在庫管理や経理も。あと毎日、私のお弁当をつくってきてくれますね。だから本当に欠かせない存在。」

--日本語教師の夢からウェブデザイナー、おもちゃメーカーになるまで

柳谷さんは1977年生まれ、子どもは12歳の娘さんと9歳の息子さんがいる。大学時代にオレゴンに留学した以外は、生まれも育ちも広島だ。柳谷さんはもともとデザイナー志望ではなく、国際協力の仕事か日本語教員になりたいと考えていた。

「高校時代、授業で難民のことを知ったのがきっかけで国際協力事業団に入りたいと思って、大学では必要であろう英語を勉強しました。就職氷河期世代なので、いろいろ受けるもうまくいかず、たまたま入れた家電量販店で販売から、総務、事務など3年くらい色々経験させてもらいました。その後、職業訓練校に行って興味のあったウェブデザインを勉強して、ウェブの制作会社に入ったんです。」

マンションの1室、若者が4人机を並べるようなスタートアップの会社だった。

「インターネットが一気に普及する時期で、どの会社も企業サイトをつくっていたので仕事はけっこうありました。小さな会社でしたが大きい仕事もあって、こんな大きな仕事もできるんだとおもしろかった。すごいハードでしたけど、みんな同世代で夜中まで文句言いながらもやって、途中ゲームで気分転換したり、ピザ取って食べたりみたいな。」

ちなみに柳谷さんの結婚相手はその会社に入って出会った人だ。社長の同級生で事務所にたびたびふらっと遊びに来ていた取引先の人。独特の世界観がある面白いデザイナーなんだよと紹介されていた。

年々売り上げも上り、人も増え、事務所も何度か引っ越し順調に大きくなっていった。自分たちが成長させている感覚が楽しかった。会社も大きくなり、自分たちでも何かサービスを始めたいと、こどもの洋服やおもちゃを売っていたECサイトを自分たちで運用し始める。それを柳谷さんも担当した。

「仕入れやモデルに服を着せて撮影したりという運用がはじまって。こういう仕事もたのしいじゃんと思うようになったのが今の仕事へのきっかけではありましたね。」

その最中、柳谷さんは産休、育休で一時仕事を休んでいた。2回目の育休が終わって会社に戻ってみたら、会社は東京の会社に買収され、社内はてんやわんや。元々いた人たちもたくさん抜けていってしまったという。

「これまで味わったことのない時代でした。ちょっと寂しい時代。でも、まだ頑張ろうと思ってECサイトもやっていました。新しい社長の方針で、『仕入れるビジネスは利益が薄いよね。だったら自分たちデザイナーなんだから、何か商品を作ったらいいじゃん』と。それはいい!と思って企画し始めたんです。当時東急ハンズに入ったばかりのレーザーカッターで試作をつくって、さあベトナムの工場に発注だ、となったら最低ロット数がめちゃ多くて無理だと。そうやって進めている中で会社の方針が変わって、事業を売却することになったんです。せっかくここまで進めてきたのに残念で、なくなるなら私がこの会社にいる意味はないと思って『私がこの事業を買いたい』と提案をしたのですが、金額の折り合いがつかず、結局他社に売却してしまって。それがきっかけでやってみようと思って始めたんです。事業を買うつもりだったお金でレーザーカッターを買ったのが最初の投資でした。」


--風景が現れる卓上ゲーム

ウェブデザインの現場からプロダクトデザインと製作をはじめてみて、急にできるものなのだろうか。

「レーザーカッターはデータをつくれれば切れたし、夫に一緒に考えてもらったりもしました。ちっちゃかった自分の子どもにこんなのがあったらいいのにというものをつくりました。最初につくったのは「okozukai」という子どもがお金のことを学ぶおもちゃ。お金のおもちゃってぺらぺらの紙製かカラフルなプラスチック製ばかりで、子どもが全然大事にしない。夫が子どもと一緒に、色違いのビー玉を何色は何円とお金に見立てて遊んでいるのを見て、そういう見立て遊びでお金について覚えられるのはいいなと思って、木材でお金を作りたいと思ったんです。」

経験を活かしてECショップを開き、卸売りも行いながら、平行してウェブやグラフィックデザインの仕事もしている。

「おもちゃは莫大には売れないので、立ち上げ当初からおもちゃだけじゃなく、これまでやってきたウェブやグラフィックを続けながらやっています。ただ、自分でプロダクトをつくって売るということをやっていると、それ自体が価値になって、経験を活かしたアドバイスをという相談から仕事になっていくこともあるんです。両輪あって今があるということですね。」

実際に広島と福井でプロダクトづくりを一緒に行っているプロジェクトがある。広島では、伝統工芸の金仏壇の職人と積み木をつくり、福井では町営の工房と木材をつかって新しいリバーシ=オセロをつくっている。

「お仏壇がいま全然売れないんですね。どうしたらいいかという相談がまずあったんですけど、リブランディングしてウェブとプロダクト開発と考えたんですが、予算的に難しくて。それじゃ持っている技術がもったいないから、私たちの商品としてデザインするからつくってくださいとお願いして積み木をつくりました。

福井県の方は、池田町という町にある町営の工房「WOOD LABO IKEDA」と一緒に商品開発をしています。森の中にある町で、スギの間伐材が出てくるので、それを生かしたコラボレーションプロダクトで、「RIVER SEA GROUND/リバー・シー・グラウンド」といいます。仕組みはオセロで、名前に川や大地があるように、戦いじゃなく山や谷をつくって風景になっていくようなゲームをデザインをしました。」

福井の木材で福井の職人が作る、新しい卓上ゲーム。一般的なオセロの駒は◯で、駒の置き場所は駒に対して上下左右斜めで8つある。「RIVER SEA GROUND」は盤面も駒も三角になっており、置き場所は駒に対して6つ。線で接するところと点で接するところがあり、見落としてしまうこともある。

「三角オセロってだけでも結構頭使うんですよね。ルールについても、オープンな開発スタイルを取っていて、体験してもらったお客さんから出たアイデアをノートに書いてもらってルールに採用したりもしてきました。リバーシルールだけでなく、将棋的に使うこともできるんです。」

ここは海で、ここは山、こっちは森かなと様々な景色が立ち上がってくる。積み木同様なにかに見立てながらゲームを楽しんでいくものになっている。




--こんにちは、お母さん

お母さんがやってきた。早速服作りについて聞いてみると。

「もう昔からそれが仕事なものでね。古いものばっかり着とるんです。1個買うと10年も20年も着てますでしょう。捨てられない性格なんです。リメイクもよくしていて、高いスカートもみんなちょんぎってますよ。サラリーマンの給料でちょっといいの買っても、もったいなくて1度か2度しか着ないまま時間が経って、捨てがたくなるでしょう。したらば、娘が見つけて着ると言うから、じゃあ思いどおりに切ってあげようって。」

小さい頃、娘さんにたくさん服作っていたことはどう覚えているだろうか。

「そもそも私がつくるより前に、オーダーでつくってもらっていた親戚の子のお下がりを着せることが多かったんです。だからせめてもアイロンをかけたり、ピシッときれいには着せてました。どれもいいもので、そのお下がりが多かったから、その時期はあまりつくらなかったんですけどね。そもそも既製品があまりなかったからつくらなきゃいけないものもあったり、給料も安いから何でもは買えないから作らなきゃいけないのもありました。」

ふりふりのものはなかったと話してくれたことについては、

「そんな女らしいことは私はあんまりしないよ。リボンやフリルとかは、あんまりね。私がシンプルなものを好きだったせいもあるから、ふりふりは着せなかったね。」

お母さんの姑さんや叔母さんがすごくおしゃれで、お母さん自身、そのお下がりをもらって着ていたという。

「どれもいいものでみんな捨てがたいから、箪笥の中にはそういうのが集まっている。だけどどれも流行のないものばかり買ってたのもあって、今でも着れそうなものも多い。」

孫はつい甘やかしてしまいブランドのTシャツを買ってあげたりしていたそうだが、イマではふたりとも全然着てくれず、もっぱらジャージだそう。


「おそろいで出掛けた日が懐かしい。今はもう体操服ばかりで、本当に洋服を買うお金がいらなくなりました。」と柳谷さんは笑った。




--柳谷環さんのクッションバッグが完成しました

柳谷環さんのスカートをループケアし、クッションバッグに仕立て直しました。

聞き手: 山口博之

写真: 山田泰一

PROFILE

PROFILE

柳谷環

千差株式会社代表取締役 

1977年広島生まれ
国際的な仕事を目指して大学で語学を学ぶ。
その後、思い描く職業とは異なるクリエイティブデザインの仕事と出会い、様々な企業のWebやECサイト立ち上げに携わる。
その経験を活かしその後独立し、プロダクトの開発から販売までのすべてをマネジメントする自社サイトの運営とクライアント企業のブランドサポートをする両輪で活躍中。

聞き手: 山口博之

写真: 山田泰一

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