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福田智枝さん

母がつくってくれたエプロン

17.09.12
HIROSHIMA

関西に生まれ、中学生で広島に引っ越してきた福田さんは、思春期を迎える頃までほとんど既製服を着たことがなかったという。母親お手製の服を着続けたことの経験と喜びを振り返ってもらった。

「気付いたら、そうでした。小さいころから母の手づくりのものに囲まれていたので、それが普通だったんです」。すらりと伸びた背にさっぱりとしたショートカットの福田さんは、そう話しはじめてくれた。

服づくりが趣味だったお母さんは、福田さんと妹さんの服をよく作ってくれていたそうで、足踏みミシンを踏んでいた光景も、電動ミシンに変わった時のことも覚えているという。洋服や縫製関係の仕事をしていたわけではなかったけれど、専業主婦だったお母さんは、かつて洋裁学校に通い、パターンなど服づくりのノウハウは持っていた。そうした服づくりへの意識は、お母さんのお母さん(福田さんの祖母)の洋服好きが土台にあるのかもしれないと福田さんは話してくれた。「妹も服好きで、以前洋服のショップ店員をやっていました。私も含めて孫にまで遺伝子がしっかり受け継がれてますね」。

手づくりの服を着ていて、既製服が欲しくなった時期はなかったのだろうか。「ちょっと母の服は違うなと思い始めたのは、中学に入るいわゆる思春期の頃でしょうか。雑誌を見るようになったからかもしれません。母が服を作る時、どれがいいとサンプルとして見せてくれていたのですが、その本に欲しいものがなくなったんです。ただ思春期だったからといって、母親が作った服が恥ずかしいと思ったことはありませんでした。むしろ作ってくれる時には、どんなのができるかとワクワクしていたくらい。ただ中学時代の外出が主に制服だったこともあって、フェードアウトみたいな感じで着なくなっていきましたね」。

姉妹の服を作り続けたお母さんは自分のものも多少作ってはいたが、父親のものは福田さんの記憶にはなかった。「リカちゃん人形のような人形用のひらひらドレスも作ってくれていたから、小さな子ども服を作るのが楽しかったのかも」。中学時代に作って貰う機会が減ったのも長身の福田さんはすでに160センチ以上あり、母親が好きで作りたい小さな服のかわいさがなくなっていたからかも、と福田さんは想像している。

思春期以降、既製服を着ていた福田さんがお母さんの作った服の魅力に改めて気づくのは、30代になってから。「たまたまレトロものが流行った時期に、以前譲り受けた母や祖母が若い頃に作り着ていた服を引っ張り出したんです。着てみると本当にしっくり来て、私こういうのが好きなんだなって改めて思いましたね」「昔の生地って、柄が凝っていたり色味が絶妙な感じで良かったり、今のものにはないよさがある。今回アルバムにしてもらうエプロンのドットにしても、こんな大きさでこんな配置のもの最近見たことがない。最近のものは良くも悪くもシンプルでさらっとしたものばかりで、昔のいい意味のクセというかアクというかがいいんですよね。」

エプロンは2、3歳の頃のもの。エプロンの着用写真は残念ながら見つからなかったそうだが、同生地で作られたスカートの写真が残っていた。自分の記憶にはあまり残っていないけれど、改めて見たとき母が手間暇かけて作っていることに気づいて、ループケアしてみたいと思ったと福田さん。今となっては手元に残っている当時の服も少ないそう。というのもたくさんいる従姉妹たちに自分たちの服がお下がりとしてどんどん旅立っていったから。だから従姉妹と撮った写真には、かつての自分の服を着ている従姉妹が隣にいたりする。作られた服も、それだけいろんな人に気に入られ、着てもらえたら本望だろう。

そんな母親を見て育った福田さんは、自分が作るという方向には向かっていかなかったのだろうか。「たまに作っています。でも母みたいに手の込んだものじゃなく、直線縫いでバッグを縫うとか、ケース的なものとか作るとか、ちょっとしたことですね。編み物のかぎ編みは母から習いました。自然とやってみようかなって。棒針でマフラーを編むのにハマってた時期には、旦那さんにもマフラーを編んであげましたね」。

昔から猫が大好きだという福田さん。「私が最初にしゃべった言葉が“にゃんにゃん”だったくらい猫が好き(笑) お母さんが作ってくれるものも猫の絵やキティちゃんみたいなキャラクターものも結構ありました。高校生の頃から18年間、実家で猫を飼っていました。猫と暮らした日々があまりにも幸せだったので、時々また猫と暮らしてみたい気持ちになりますが、最近は近所のなじみの子をもっぱら探してかわいがる日々です(笑)」。一緒に外を探して歩いたのだけれど、残念ながらタイミングよく見つけることはできなかった。

部屋にあるシロクマの貯金箱に、麻ひもで編んだ小さな帽子をかぶせてあげていた。猫にも帽子やキャットニップのような、何かを作って楽しそうに写真を撮る姿が目に浮かんだ。




--福田智枝さんのアルバムが完成しました

福田智枝さんのお母様がつくってくれたエプロンをループケアし、アルバムに仕立て直しました。

--生まれ変わったアルバムを手にした福田さんからうれしい感想が届きました

「リボンや赤いパイピングなど、母が愛情を込めて作ってくれたエプロンのもともとの個性を生かす形で作って下さってとても感激しました。
以前は使わないからしまい込んでいたのですが、こんなに素敵に作っていただいたのでこれからは手元に置いて時々眺めたりと新しい思い出を増やしていきたいです。」

聞き手: 山口博之

写真: 山田泰一

PROFILE

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福田智枝

主婦

兵庫県出身。中学校入学と同時に父の転勤で広島へ。安田女子大学卒業後、会社員として働き2005年に結婚。その後も仕事を継続し、家事の両立生活がはじまる。はじめは要領も悪くただただ大変な毎日を過ごすが、年を重ねるごとに衣食住を整え、暮らしを豊かにする家仕事の楽しさと奥深さに目覚める。収納、アロマ、ハーブなどの資格を取得し、日々の生活に取り入れながら健やかな毎日を送っている。

聞き手: 山口博之

写真: 山田泰一

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