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三浦剛さん

人生を変えたハワイの
アロハシャツ

18.02.08
HIROSHIMA

すらりと伸びた背と坊主頭にたっぷりとした髭。一見すると何をしている人なのかわからない三浦剛さんの仕事は、枯山水の庭から個人邸の庭、グランピングの装飾まで幅広く手がけている造園家/ガーデンクリエイター。いつも仕事のことばかり考えていた時期を経て、ある旅行をきっかけに暮らしかたを見直し、仕事のペースを落としたという。そのきっかけとはなんだったのか。

--年齢不詳のガーデンクリエイター

「代々造園業をやってきたわけではなく、父が15年近く造園会社の社員として働いていた後、91年に独立して三浦造園を始め、2003年に長男の僕と弟が加わったんです。2017年にようやく法人化して株式会社MIURAにし、法人化と同時にTARUSHI(https://www.tarushi-miura.com/)というガーデンブランドも立ち上げ、庭だけじゃなくグランピングなどの装飾も手がけています。」

見ただけでは年齢不詳。年齢とお父さんと一緒に会社を立ち上げるまでの経緯を訊いた。

「1977年生まれの40歳です(笑)。22歳からこの仕事を始めて18年になります。最初はよその造園業者へ4年ほど修行に行きました。親の跡を継ぐ時、一度よその冷や飯を食べるじゃないですけど、そうせずに親子で仕事をするとなあなあになってしまうと思ったんです。あとは、親元を出ないと父親の知っていることしか学べないという意味で技術が低下してしまう問題もあります。自主的に学べばそんなこともないんでしょうけど、そういうことに陥りやすい環境でもあるということですね。親元の方が楽なんですよね。親の技術も取引先もコピーをすればいいわけですから。でも、そうじゃないと思ってたんです。元々3〜5年と考えていたんですけど、4年働いて周りの風景が見えてきたような感じがあって、次のステップに移ってみようと父と働くことにしたんです。」

妻です、と紹介された女性がお茶を出してくれた。

「妻とも前の職場で知り合いました。社内恋愛といえば、そうですね。前の会社は造園だけじゃなくお花屋さんも経営していて、妻はそのお花屋さんで働いていたんです。」

親の仕事を継ぐというのか、親と同じ仕事を選択したというのか、結果的に三浦さんは親と一緒に仕事をしている。父親と同じ仕事をしていくことは自然なことだったのだろう。

「学生時代は特にやりたいことがなかったんです。大学も造園業と関係のあるデザインとかランドスケープとかを勉強したわけじゃありません。楽な仕事がしたいとだけ思っていました(笑)。あと、当時から髭を生やしていたので、ひげがOKな職場がいいなとか。そもそも周りでみんながしている就職活動が、僕にはぴんと来なかった。やりたいことや趣味みたいなことも特になかったから、結局は父親がやってるから手伝おうみたいな感じでしたね、最初は。」

気負いも義務感でもない飄々と造園業に足を踏み出したように感じられた。実際そんな軽いものではなかったのだろうけど。父の背中を見てきたとはいえ、実際やってみたら違うということはよくあるが、始めてみてもどうやら楽しかったようだ。

「父がやっていたとは言え、自分にとっては全く新しい世界。でもひとつひとつ新しいことを知って、課題がクリアできていく瞬間は楽しかったですよ。もちろん忙しくはありましたけど。最近では、修行時代よりクリエイティブな要素が必要になってきているので、それはまた違う楽しみになっています。右脳が働いてる感じが気持いい。でも、そう思えるのは後半になってからで、当分は日々の仕事に追われて気が付かなかったですね。」

--暮らしや仕事をガラッと変えてくれたハワイ旅行

苦労や辛かったといった言葉は出てこない。奥さんとも出会った職場は、いい職場だったに違いない。修行時代から慣れない父親との仕事、そして自分が中心となって仕事を回すようになってきた日々。きっと慌ただしい毎日だったのだろう。2010年、32歳の時に家族皆で行ったハワイは、いつもの忙しい自分を省みるにふさわしい対照的な空気だった。

「仕事のクリエイティブな楽しさに気づくきっかけになったのは、今回ループケアしてもらおうと思っているアロハシャツを買ったハワイに行ったことなんです。両親と僕の家族、弟の家族で一緒に行ったんですが、行く前は気乗りしなかったんです。当時結構忙しい時期ではあって、今仕事を空けていいのかなとか緊急の電話掛かってこないかなとか、そんなことばっかりを考えてて。みんなが行くっていうならくらいだったんですよ。でも、行ったらハワイの人がすごくあったかくて、言い方が悪いですが、いい意味で自堕落というかルーズで不真面目な感じが心地よかったんです。あの土地ではそれがちょうどよかった。大変な思いをしながら仕事をしてる感じにも見えなくて、みんな「アロハー」とか声を掛けてくれるし、自分もそんな陽気で穏やかな感じで仕事に取り組めたらいいなって。それで、帰ってきてちょっと仕事のペースを落としたんです。そうしたことによって時間だけじゃなく考え方にも余裕が生まれてきて、よりクリエイティブな頭の使い方ができるようになったし、いろんな意見を吸収できるようにもなりました。」

ハワイで得た大切な時間。でも家族皆が同じ体験と実感を味わったわけでもなければ、急な変化があったわけでもないだろう。でも、そこは長い時間ともに過ごしてきた家族。

「みんなが同じような体験をしたかどうかは分かりません。ただ、ゆとりを持って取り組もうねと話した時、それなりには協力してもらったとは思うので、理解はしてくれていると思います。2年前くらいまでは、30%が山口県、5%が島根県、残りが広島だったんですが、仕事のペースを落とすことをしてからは、遠方からの依頼は一度お断りして近くを充実させるようにしています。」

--庭造りという無限の可能性との戦い

ペースを落としたとはいえ、株式会社MIURAはしっかりと忙しい毎日を過ごしている。

「いわゆるお庭づくりはもちろん、外構(エクステリア)として駐車場を造設したり、目隠しのようなフェンスを設置したりもします。あとは、グランピングのようなイベントの装飾もやらせていただいています。庭は個人庭もあれば、商業施設等もあって、レインボー倉庫(https://loop-care.jp/story/yasumura)の植栽もやらせてもらいました。最近はインバウンドで宮島に来る観光客が多いので、民泊やホテルの改装で声を掛けていただくところも増えています。」

修行を経て、父親とは違うところから技術と美意識を育ててきた三浦さん。同じ職人同士で庭造りについて対立することもあるのではないだろうか。無限の可能性がある庭という存在に対峙する人たちが、みんなでいいと思うものを作ることは簡単ではないはずだ。

「対立は絶対的に起こりえます。だから、現場ごと責任者を決めてその責任者に従うかたちにしています。身内なので言い始めたら切りがない。言い過ぎたらそもそも持っている感覚/感性に触れて否定することにもなりかねない。ちっちゃいことは言ってもいいけど、基本的にはリーダーを決めてその下でやっています。」

父親との対立は世代的なこともあるだろう。単純に親子という意味での対立もあるかもしれない。その対立の原因は、例えば石ひとつとってもあるという。

「同業者は誰しもあると思うんですけど、例えば石の向きひとつでもなんぼでも議論ができるわけです。木と違って石は、位置や角度、埋め方など、上下左右360度方向を変えられる。だからどこを正面にするんだっていう。さらに、正面は誰が見てもここだと決まっても、わかった上であえてちょっと崩すみたいなこともします。崩すその熟練の技について言い始めると、キリがない。だから合格点を共有できたら、あとの感覚的なところはリーダーのセンスにするんです。」

--人工知能の未来。造園業の未来。

無限に可能性がある中で、ひとつの完成形を作り上げることの難しさ。しかし、現実問題として庭付きの一軒家に住む人、住める人というのは確実に減っている。住めたとして、庭にお金をかけるかどうかはまた別の話だ。

「僕は、廿日市の造園協会の副会長をしてるんですけど、皆さんの話を聞く限りは全国的に造園業者は減っています。お庭がある家が少なくなってきてることと高齢化です。この辺りの同業で僕より年下の人ってほぼいません。人工知能に関する記事を見ると、大体20年以内に80パーセントの仕事がなくなりますよと言っていたりしますよね。さらに10年以内に先行してこの業種はなくなりますよというリストの中に、タクシー運転手などに混ざって造園業が入っているんです。日本庭園をやるような造園業はなくならないとは思いますけど、いづれにせよ機械でも応用が利くような時代が来るんだと思うんです。ここからここまで作業してみたいな単調な仕事はなくなってしまう。現状それで食べている人たちは、次の手を打たないと機械に飲み込まれてしまう。だからクリエイティブな部分をより伸ばしていかないと厳しいんじゃないかなと思っています。さっきお話した360度どの角度でも置ける石をどう置いて、どうズラすのかという、人間的なことが必要になってくると思うんです。人間は、合理性から外れた正解を出せると思うから。そういう意味での残り方を考えていかないとって協会の中でも言うんですけど、大体笑われますね。」

--考えてもいなかった人が喜んでくれる庭造り

ちょっと個人的なことなのだけれど、私はどうしても植物を枯らしてしまう。水をあげても、たまに日に当ててあげてもなぜかいつの間にかダメになる。AIが管理してくれたらいいのにとも思ってしまう。

「作った後の庭は基本的にオーナーさんが世話をして、僕たちは1年に1回とか決めてお手入れをさせてもらうとかはあります。でも、いくらこうすべきという育て方をしても、枯れるときは枯れるんですよ(笑)。僕らでも枯らすことはあります。だからどこがまちがってたんだろうって自問自答もすごいですよ。ある程度ボリュームがある現場だと、木が枯れたら保証するのは僕らなんです。お客さんが僕たちの指示どおり一定間隔でお水をあげて、1年間メンテナンスした結果、木が生育すれば保証は外れるんですけど、ちゃんと細かく気を使っても枯れることがある。そうなったときは僕らが責任を取って、無償で植え替えますよってこともしています。」

プロも枯らすことがあるのならと少し安心したけれど、やはり植物は生き物。生命を扱うことは簡単なことではない。一般的に、枯れる確率は100本植えて3本程度だそう。同じ状況で植えても枯れるものも元気なものもあるし、産地でそもそもちょっと傷が付いて、そこからダメになる可能性もあるそう。生命に絶対はない。

「だめになったら植え替えるというリスクが僕らにある分、気を引き締めなきゃいけないし、手を抜くことは絶対的にできません。」

重労働なうえにそんなリスクを伴う造園という仕事の喜びはどこにあるのだろうか。

「出来上がった時のお客さんの喜びが直接伝わってくる仕事だと思うし、庭という大きなものをつくることになるので、近所の方が自然と見に来るんですよ。近所の方にとっては自分の庭じゃないけれど、外から見える庭であれば周辺の風景が変わることでもある。だから庭の持ち主だけじゃなくて、知らないうちにいろんな人と風景をシェアしているというか、特定のお客さまを喜ばせようとしてつくったものが、第三者にも喜んでもらえる。それが喜びにも、ちょっとした自信になるというか、自分のやってきたことを確信できるところもありますね。」

--雨が降ったら、ちょっと休んでみる

自分たちのペースをしっかりと守りながら、クリエイティブな面では攻めるという理想的な仕事の方法を実践する三浦さん。今回ループケアする服は、そうした生き方を導いてくれたハワイで買ったアロハシャツだ。

「ハワイの古着屋さんで買ったんだったかな、当時アロハを何着も買ったんです。買うまではアロハを着たことなかったんですけどね。日本に帰ってきてから、これを着てショッピングモールでベビー用品を買ってたら、人にジロジロ見られましたね(笑)。人生、こんなに緩くていいんだってことを教えてくれたことの象徴的なものがアロハ。きょうはこれだけ絶対やらなくちゃとか、仕事の段取りを考えて必死にやっていたのが、今日は雨だからしょうがないね、ちょっと休もうか、みたいな。そんなノリが羨ましかった。今、山に囲まれて暮らしてますけど、元々は海派なんですよ。僕の持論によると、山に住んでる人は海が好きで、海や町に住んでる人は山が好き。」

後ろに山を背負った場所にある三浦さんの自宅。目線を遠くにすると見えてくる山の突端には、バブル期に人気を博し、今では廃墟として有名なレジャー施設がある。

「山側に住んで造園の仕事をしていますけど、隣接する業種の林業はとても厳しいのが現状です。政治的な補助がないと自力では難しいところまで来ていると思います。それと同時に考えるのがやっぱり過疎化。この辺りにも、僕の同級生が7、8人おったんですけど、もう僕1人だけになってしまって、みんな便利な街の方へ引っ越してしまった。この家から上もまだ田舎が続いてるんですけど、ここはまだ車で10分ぐらい行けばコンビニとかもあるけど、上に行けばそうもいかないですから。」

三浦さんの子どもは今、13歳、10歳、3歳の三人。決して便利とは言えないけれど、眺めも空気も気持ちのいい家からいつかは出ていくのかもしれない。ゆったりと仕事をすると決めた三浦さんは、きっと他の父親よりも長い時間を子どもたちと一緒に過ごすはずだ。それは子どもたちにとって、コンビニが近い便利さよりも間違いなくもっと大切なことだ。




--三浦剛さんのアルバムが完成しました

三浦剛さんの人生を変えたハワイのアロハシャツをループケアし、アルバムに仕立て直しました。

聞き手: 山口博之

写真: 山田泰一

PROFILE

PROFILE

三浦剛

Garden creator

1977年生まれ。
造園業の家庭で育つ。自身も大学卒業後から造園の世界に飛び込み
修行の時代を経て、実家の三浦造園へ。
これからの造園に新しい価値を求めブランディングに取り組む。
家庭では3児の父でもある。

聞き手: 山口博之

写真: 山田泰一

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